リテール大革命

なぜ、アマゾンは「薬局ビジネス」に注力するのか? 競合の“破壊者”となる生成AIの実力石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/3 ページ)

» 2024年04月10日 12時45分 公開
[石角友愛ITmedia]

連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線

小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。

 Amazonの「薬局ビジネス」に対して、生成AIがどう役立っているかご存じでしょうか? AmazonといえばECのイメージが強いですが、実は2020年以降、医療ビジネスに積極参入しています。

Amazonが薬局ビジネスに注力(出所:ゲッティイメージズ、以下同)

 例えば22年7月にはヘルスケアサービス企業である米One Medicalを約39億ドル(約5900億円)で買収し、ヘルスケア分野への取り組みを拡大する意向を示しました。この買収には、米国の医療保険制度やかかりつけ医制度といった背景の下、診察予約や薬の受け取りなどのプロセスを改革し、さらに遠隔医療やデジタルヘルスツールを通じてサービスを拡張することが目的とされていました。

Amazonが薬局ビジネスに注力するワケ

 Markets and Marketsが発表した23年の最新レポートによると、米国のデジタルヘルスケア市場は22年時点で3946億ドルに達し、27年までには9745億ドルの規模に拡大すると予測されています。この要因として、以下のような背景が考えられます。

  • コロナ禍による、電子処方箋(しょほうせん)の浸透やオンラインでの遠隔診療の技術の向上
  • デジタルヘルスサービスや製品を提供する医療機関の増加
  • 糖尿病や肥満など、常時監視や長期的なケアを必要とする慢性疾患の増加
  • 医療保険制度改革法(ACA、通称オバマケア)の導入拡大(オバマケアによって、医療へのアクセスをより便利で安価にすることで、医療機関がインセンティブを得られるようになった。そのため、コスト削減、患者ケアの質を向上させる手段としてデジタルヘルスケアソリューションを導入する医療機関が増加した)

 このような状況を受け、Amazonが20年に開始したのがオンライン処方サービスのアマゾンファーマシーなのです。

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