70億円の赤字想定 北陸新幹線・延伸ともに爆誕した「ハピラインふくい」の今後を占う宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(1/4 ページ)

» 2024年04月12日 09時50分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:

乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。


 2024年3月16日、新しい鉄道会社「ハピラインふくい」の路線が開業した。この路線は、北陸新幹線・金沢駅〜敦賀駅間(約125キロ)開業に伴い、並行するJR北陸本線のうち福井県内の区間(大聖寺駅〜福井駅〜敦賀駅間)を引き継いで誕生したものだ。

鉄道 地理院地図に筆者が加筆

 15年3月の長野駅〜金沢駅間延伸で「北陸新幹線」が開業した際には、並行する北陸本線のうち富山県内の区間が「あいの風とやま鉄道」に、石川県内の一部区間が「IRいしかわ鉄道」に引き継がれた。

 そして今回の金沢駅〜敦賀駅間延伸で、福井県内の区間がハピラインふくいに、石川県内の金沢駅〜大聖寺駅間がIRいしかわ鉄道に移管された。これで、約240キロにも及ぶ北陸三県(富山県・石川県・福井県)の並行在来線(旧:北陸本線区間)が、全て第三セクター鉄道へ引き継がれたことになる。

鉄道 「ハピラインふくい」

 ハピラインふくい開業初日は、北陸新幹線の開業イベントに向かう人々で、どの車両も満員。「これから県民鉄道として頑張って参ります」と繰り返しアナウンスされ、終始祝賀ムードに包まれていた。

 しかしハピラインふくいの船出は初日からトラブルも多く、不安を残すものであった。

 ハピラインふくいの今後の経営環境は、課題が山積している。期待と不安が入り交じるハピラインふくいの今後を探りつつ、北陸3県ごとの第三セクター鉄道の課題についても整理してみよう。

11年間で「70億円の赤字」想定 ハピラインふくいの現状

 現状でも1日2万人に利用されているハピラインふくいだが、今後10年間で1割ほどの利用者減少、それに伴う減収が見込まれている。この減少分を補うべく、利用者獲得・収益向上に向けて、開業とともにさまざまな取り組みが行われている。

 まずは、ダイヤの改善だ。これまで1日30往復以上も運行されていた「サンダーバード」(大阪方面)、「しらさぎ」(名古屋方面)などの特急列車が消滅したかわりに、普通列車が20本も増発された。

 福井平野は通勤・通学とも福井市への一極集中が激しく、6市2町で通勤・通学の移動先として福井市が1位に(他市町も僅差。令和2年国勢調査より)。なかでも人口が集中するハピラインふくい沿線での列車本数の増加は、地元の人にとってありがたい話だろう。他にも越前市内で新駅「しきぶ駅」(武生商工高校の前)の設置に向けて動くなど、利便性の向上に向けて動いている。

鉄道 「ハピライン」ふくい」はJR北陸本線からの移管によって、運転本数が大幅に増加している(福井県資料より)

 また、福井市までの遠距離通勤・通学が多い嶺南(敦賀市・南越前町など)などに配慮して、敦賀駅〜福井駅間で快速の新設も行われた。福井駅〜金沢駅間も現行の103分から最短77分に短縮するなど、スピードアップが図られている。

鉄道 「ハピラインふくい」快速

 ハピラインふくいは、こういった列車の増発で初年度(令和6年度)の運賃収入を17.5億円、これに加えて貨物列車の線路使用料(乗り入れによる経費増分の支払い)が17.2億円、ほか雑収を含めて38.7億円の収入を見込んでいる。しかし諸経費は46億円前後かかる見込みで、今後とも年間6億〜7億円程度の赤字が発生。開業後11年間の積算で、約70億円の赤字が出ると計算されている。

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